電子マネー、挑む後払い JCBなど顧客囲い込み懸命

5月1日8時16分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

 クレジットカード各社が、後払い式電子マネーの普及へ攻勢を強めている。三井住友カードなどが発行する「iD(アイディ)」は、今年7月から全国のセブン−イレブンで利用可能に。JCBなどの「クイックペイ」も、ここ2年で25%ほど発行枚数を増やした。各社の狙いは手軽に使える電子マネーを“入り口” に、自社カードへ顧客を囲い込むことだ。ただ、電子マネー市場では、流通系や鉄道系による「前払い式」が大勢を占めおり、カード各社は熾烈な戦いを強いられそうだ。

 ◆主流は前払い式

 「日本が電子マネー先進国であり続けるよう、普及、拡大に向け、取り組みたい」。今年4月、アイディのセブン−イレブン導入にあたって、ブランド管理するNTTドコモなど3社はこんな抱負を表明した。

 アイディは、クレジット各社の発行するカードや、ドコモのお財布ケータイで使用が可能な後払い式電子マネー。店頭で専用端末にかざすだけのいわば簡易型のクレジットカードだ。2006年の発行開始以来、順調に拡大し、現在は1400万枚に上る。

 使える場所も増えており、コンビニエンスストアファミリーレストランのような店舗、タクシーなどで利用可能。各所に設置された読み込み用端末は07年末の約24万台から、今年2月時点で44万台と2倍近くにまで増えた。「今後も、拡大の手はゆるめない」と三井住友カードの担当者は意気込む。

 05年に発行を始めた「クイックペイ」も08年3月時点の390万枚から、今年3月時点で486万枚に拡大。端末台数も、10.7万台から24.2万台へと倍増した。Visaが提供する「Visa Touch」も着実に利用店舗を広げている。

 クレジット各社の狙いは、電子マネーユーザーを自社のクレジットカードに取り込み「メーンカード」にしてもらおうという点だ。というのも、クレジット会社の後払い式電子マネー発行にはクレジットカードの申し込みが条件。いわば電子マネーが子カード、クレジットカードが親カードの関係だ。

 「たとえば、電子マネー使用でたまるポイントは、親カードのポイントと合算できるなどのメリットを付加している。そうなれば、親カードも使ったほうがトクなため利用が増える」と、三井住友カードの担当者は語る。

 JCBの調査では、09年の1人あたりの平均保有枚数は3.5枚と、複数のカードを持つのが当たり前の時代になった。

 この枚数はほぼ毎年横ばいだが、ただ、このうち「一番多く使うカード」の月平均利用額は年々増えており、09年は4.5万円と過去最高を更新。「メーンカードの使用への集約が今後ますます進んでいくことが推測される」(JCB)だけに、クレジット各社にとって、自社カードの魅力を高めることは至上命題だ。

 ◆現金社会の壁

 ただ、後払い式の普及には課題も多い。というのも、現在の電子マネー市場の大半は、前払い式が占めるからだ。

 三井住友カードの調べによると、後払い式の代表であるアイディとクイックペイの合計発行枚数は約1880万枚。一方、前払い式は「スイカ」「エディ」など4種類を合わせて1億776万枚と膨大だ。

 チャージの手間がいらないのが後払い方式のメリットだが、「日本は現金社会。後払い式は、買い物しすぎるおそれもありなじみにくいのではないか」(大和総研の八木昭彦副主任研究員)との指摘もある。

 前払いカード式陣営も、ビットワレットの「エディ」が6月上旬までのデイリーヤマザキで全1400店で対応を可能になるなど、拡大の手をゆるめない。電子マネー市場は今後も拡大が予想されるが、後払い式にとっては、主導権を握る上で、大きな困難が待ち受けているといえそうだ。(山口暢彦)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100430-00000000-fsi-bus_all

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