羽田空港国際化 タクシー会社に商機 ANZEN 定額・外国語で飛躍

2010.11.18 05:00
羽田空港で10月末から、国際定期便が32年ぶりに復活したのをきっかけに、タクシー各社が羽田の旅客の囲い込みに走り出した。定額料金制に、外国語での接客。業界初の商品で“快走”するANZEN(安全)グループ(東京都板橋区)の取り組みを追った。

 ◆HISと提携

 「なぜ安売りするのか」。同社が昨年12月、羽田と都内各地を定額で利用できる新サービス「羽田空港定額制タクシー」を打ち出すと、他社からこんな反発の声が寄せられた。

 都内を5つのエリアに分け、羽田との行き来を定額で利用できる仕組みで、場所によっては3000円以上を浮かせることができるという。ただ、羽田の乗客は、1回の乗車の売り上げ単価が高く、景気低迷で需要が冷え込む業界にとっては貴重な“大口顧客”だ。他社のあせりはもっともだった。

 これに対して同社は「新たな需要を喚起したい」と、乗務員が自ら乗客に売り込んできた。8月には、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)と業務提携に合意。HISの旅行商品にタクシー利用を組み入れてもらう一方、HISの広告を車に掲示することにした。その結果、新サービスの利用件数は8月に目標の1000件を突破した。

 同社の出足好調を受けて追随する動きが活発になってきた。関東運輸局によると、同様のサービスを展開しているのは現在、個人営業も含めて8000を超える。

他社の同調を予測したANZENグループが次に打ち出したのは、外国語で接客する「バイリンガルタクシー」だ。2月に始めた。社内で外国語を話せるのは、総勢1700人の乗務員のうち60人。英語や中国語、韓国語など8言語に対応している。

 ◆中・韓の対応強化

 外国人観光客3000万人誘致を目指す政府が最重要ターゲットとして狙うのは中国や韓国だ。同社は6月、中国人と韓国人の女性2人を採用し、乗務員向けの語学研修講師や、中韓旅行会社への営業活動を任せている。

 羽田の新国際線ターミナルでは、出迎えの現地講習も開催し、準備は万端だ。語学が苦手な乗務員には「目的地まで○分かかります。トイレをお済ませください」など、想定される会話を外国語で書いたシートを配布。指で示しながら、乗客とコミュニケーションをとれるようにした。

 業界では、2002年の規制緩和でタクシー台数が飽和状態になった反動で、現在は減車が進められている。

 同社の田中慎次執行役員は「売り上げを上げるため、接客の質を高めることが求められている。語学は“武器”の一つ」としたうえで、「二の矢、三の矢を放っていきたい」と語る。同社は今後も、羽田を軸にしたサービスの拡充を図る方針だ。
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