デフレ脱却、開けぬ視界 「宣言」1年、需要不足変わらず

フジサンケイ ビジネスアイ 12月6日(月)8時15分配信
 「デフレ宣言」から丸1年。政府はデフレ克服を「日本経済の最重要課題」(野田佳彦財務相)と位置づけ、来年度の物価プラス転換を目標に掲げる。だが、根本原因である需要不足は解消されず、物価下落に歯止めがかからない。消費を下支えしてきたエコカーやエコ家電などの購入補助政策も終了や規模縮小が続く。頼りの海外経済も弱含みのままだ。10月の月例経済報告で「足踏み」状態とされた国内景気が再び下向けば、日本はデフレという名の“アリ地獄”にはまりこんでしまう。デフレ脱却の見通しはあるのか。

 ◆テレビ「先食い」過熱

 東京・多摩地区にある家電量販店。11月下旬の週末、薄型テレビコーナーは家族連れ客で通路も通れないほどの盛況ぶりだった。省エネ家電を買うと受け取れるエコポイントが12月1日から半減するためだ。

 この量販店は1年ほど前から薄型テレビの売り場面積を1.5倍に増やし100台近いテレビを陳列したが、すでに大半が売り切れ。特に売れ行き好調の30型台の機種は5万円を切るものも少なくない。展示品すら売れ、陳列も虫食い状態だ。

 接客に大わらわの男性店員は「こんなに短期間でテレビが売れたのは記憶にない」と汗をぬぐい、こう続けた。「数カ月前から、ちょっと異常と思えるほどの値下がりが続く。新製品が処分品と同じぐらいの安値だ。明らかに需要の先食いで過熱している。来年はどうなるやら」

 市場調査会社GfKジャパンによると、11月第4週の薄型テレビ販売台数は前年同週比5.2倍と大幅に伸びた。年間販売台数は、過去最高だった昨年の1390万台を大きく上回り、2500万台を超える見通しだ。

 ただ、エコ家電のように消費刺激策に下支えされた生産の拡大は、雇用や賃金改善にまでは波及せず、消費者の購買力は向上しない。結果、販売店は安売りに走らざるを得ない。将来の需要前倒しが進み、供給能力過剰は解消されず、経済対策の空回りは続く。

 量販店側もエコポイント駆け込み需要の反動を見据えて戦略を立てる。最大手のヤマダ電機は「来年7月の地デジ完全移行まではテレビ需要は続く」と分析する一方、「その後はエコポイント対象ではないDVDレコーダーなどの需要が高まる」とし、関連家電の販売をてこ入れしていく計画だ。

 ◆自動車の反動深刻

 先行して9月に補助金が終了した自動車の場合、“特需”の反動は深刻だ。トヨタ自動車の10月の国内生産は前年同月比22.4%減の23万7089台で、1977年の水準まで落ち込んだ。好調だったハイブリッド車(HV)などの国内販売が、補助金終了で低迷したためだ。北陸地方のある自動車ディーラーは「話を聞いてくれる客さえ見つからない。値下げ以前の問題」と販売の落ち込みに天を仰ぐ。

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 ■生活防衛 安値競争に拍車

 裾野の広い自動車産業の落ち込みは、景気への影響が大きい。政府は11月の月例経済報告で、生産について2カ月連続で判断を下方修正したのに加え、個人消費についても昨年2月以来、初めて判断を引き下げた。企業業績の悪化が雇用や賃金を下押しし、生活防衛意識を高める家計はより低価格の消費を求める傾向が強まっている。

 横浜市の「おだいどこ酒場」関内店は「15分375円」で飲み放題・食べ放題という“激安”居酒屋だ。同店を運営する「プライムリンク」(東京都港区)は「漫画喫茶やコインパーキングのように短い時間単位で料理やお酒を楽しめる場を提供したかった」(広報)と狙いを話す。

 「『2時間で3000円』が1回の飲み会でお得に感じてもらえる基準」(同)と設定。セルフサービスのバイキング方式にしたため人件費などが抑えられ、その分、素材の原価を上げて料理の質にこだわったという。「短時間の利用者ばかりだと経営的には苦しい」が、90分程度の飲み会でにぎわっている。

 食べ物や飲み物を299円均一で提供する居酒屋「うまいもん酒場えこひいき」を運営するコロワイドも、全体の客数や売り上げは落ちていないという。「デフレによって低価格市場が開拓された」(広報)のだ。

 10月の全国消費者物価指数は、値動きの大きい生鮮食品を除いた総合指数が20カ月連続マイナスとなった。海江田万里経済財政担当相は「来年度中に物価をプラスにするという政府目標に向け努力しなければいけない」とさらなる対策の必要性を訴えた。しかし、日本経済全体の需要と供給の差を示す需給ギャップ(GDPギャップ)は今年7〜9月期でもマイナス3.5%、金額にして15兆円という構造的な需要不足がある。

 菅直人首相が経済財政担当相時代にデフレを宣言したのは昨年11月20日。1年あまりが経過したが、10月の完全失業率(季節調整値)は5.1%と高止まり、首相が訴える雇用も増えていない。デフレ脱却はみえないどころか、さらに深化しているともいえる。(大坪玲央)
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