東京五輪招致、経済効果をどう見ればいいの?/木暮太一のやさしい経済ニュース解説

THE PAGE 2013/8/29 11:17

2020年の夏のオリンピック・パラリンピックをどこでやるか、大きな注目を集めています。来週9月7日土曜日に、ついに開催地が発表されます。

―――「候補はどこだっけ?」

最終候補は、トルコのイスタンブール、スペインの マドリード、そして東京です。そして、現時点では東京が「優勢」と考えられています。 前回、日本で夏のオリンピックが開かれたのは、1964年です。もう50年も前のことなんですね。

そのため、そろそろもう1回オリンピックを日本で!と考える人も多いかもしれません。ただ、経済的に考えると、東京招致に躍起になっているのは「生で競技を見たいから」ではありませんね。オリンピックが日本で開催された時の経済効果を狙ってのことです。
1.2兆円と3兆円の違い
―――「オリンピックの経済効果はどれくらいなの?」

オリンピックを開催することで生じる直接的な効果は1.2兆円程度のようです。これには、外国人観光客が使うお金や、会場設備を建設するために使われるお金、大会運営費などが含まれます。

ただ、経済には「波及効果」があります。それを含めると、日本全体で約3兆円のメリットがあるという試算がされています。

―――「どういうこと?」

簡単に言うと、「誰かが使ったお金は、別の誰かの所得になり、その人がまたお金を使うようになる」ということです。

外国人観光客が、東京のホテルに泊まり、東京のレストランで食事をすれば、そこでお金が使われます。それはすなわち、東京のホテルやレストランの売上が増えるということで、そこで働く人たちの給料が増える(もしくは、そこで働く人の人数が増える)ということです。

つまり、全体で考えて、日本人が手にする給料が増えるのです。ここまでが「直接的な効果」です。

そして、給料が増えれば、その分使うお金も増えますので、そのホテルやレストランで働く人たちは、より多くの買い物をするようになるでしょう。そして、その人達が使ったお金は、また別の誰かの給料になっています。つまり「波及」しているのです。
この「波及効果」まで含めると、約3兆円のメリットがあるようです(東京都の試算による)。

―――「なるほど、それはすごい。やはりオリンピックやった方が経済にはいいんだね」

直接的な効果は公共事業と同じ
ただ、いくつか手放しで賛同できない要素もあります。
まず、「直接的な効果」について。この1.2兆円の中には、施設整備費(3557億円)、大会運営費(3,104億円)が含まれています。これらはオリンピックのために需要が発生したというより、オリンピックを開くために必要な経費です。
お金に「色」はありませんので、経費だろうが、需要だろうが、そのお金を受け取った人は経済効果を感じます。しかし、これは一歩間違えれば、昔ながらの公共事業の発想と同じようになります。「国がムリにでもお金を使えば、民間企業が潤って、景気が良くなる」という考えで、公共事業などの景気対策が行われてきました。しかし、いくらお金をばらまいても、経済は良くなりませんでした。それと同じ要素を含んでいるということです。

施設建設費には、スタジアム設営や選手村の建設などが入ります。でも、大会が終わった後にそれらの施設が有効に使われなければ、膨大なお金が無駄になりかねません。

―――「波及効果は、どうなの?」

波及効果は、なんとも言えません。どれをその「波及」とみなすのかで、金額が変わってきますし、そもそも推測の部分が大きくなるので、正しいとも正しくないともいえないのが正直なところです。
「期待の自己実現」で景気回復?
―――「じゃあ、オリンピックをやっても景気が良くなるとは言えないのかな?」

実際に世界中から観光客が来ることは、(ほぼ)間違いないので、多くの人がお金を使ってくれると考えていいでしょう。ただ、わたしはそれよりも「気分の問題」が大きいと思っています。

病気は「気分の問題」と言われます。それと同じで「景気も気分の問題」なんです。これから楽しいことが待ってると、ワクワクして、明るくなりますよね。

自分の給料が実際に上がっていなくても「アベノミクス効果」で、飲み代を増やしている人がいます。それも「なんか景気良くなりそう!」と気分が盛り上がっているからです。

経済学には、「期待の自己実現」という言葉があります。みんなが同じように期待(予想)すると実際にそうなる、ということです。みんながA社の株が値上がりすると予想すれば、みんなが買います。それによって、実際にA社の株が上がるということです。

それと同じように、オリンピックで景気が良くなる!とみんなが予想すれば、消費や投資に前向きになり、実際に景気が良くなることも考えられます。
オリンピックを東京で開催し、日本人の「気分」が前向きになれば、高い経済効果が得られるのではないでしょうか?

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木暮 太一(こぐれ・たいち)

経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計80万部。最新刊は『伝え方の教科書』。

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130829-00010001-wordleaf-nb&p=2


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