塾・予備校授業料 デフレの波 「聖域」崩れ、競争激化 「お得感」で囲い込み

5月30日9時42分配信 毎日新聞
雇用や所得環境の悪化を受けて家庭で教育費支出を減らす動きが強まっていることに対応して、授業料などを引き下げる塾や予備校が増えている。教育費は長年「家計の聖域」とされてきたが、少子化と景気の先行き不安の影響で教育市場は縮小傾向。ここにも、デフレの波が押し寄せてきている。【井出晋平、和田憲二】

 5月の平日午後5時。神奈川県を中心に130校あまりを展開する中萬(ちゅうまん)学院の港南台スクール(横浜市港南区)では、小学6年の児童18人が教室で黙々と算数のテストに取り組んでいた。

 同学院は3月から小学生、中学生コースの授業料(夏期講習など除く)の引き下げに踏み切った。4教科習う小6コースは、模試代やテキスト代も含めた年間費用を従来より17%安い17万9954円に設定。5教科習う中1コースでは、通塾日を週3日から2日に減らす代わりに、年間費用も26万2804円と約3割安くした。

 同学院では、08年秋のリーマン・ショック後の不況で、保護者から「授業料を安くしてほしい」という声が強まったほか、経済的理由で退塾する生徒もいたという。天野貴幸広報室長は「値下げは家計の負担を軽減するため」と言い切る。昨年は新規生徒が減ったが、今春は値下げ効果で2ケタ増になったという。3月から小6コースに娘を通わせる母親(46)は「他の支出を削ってでも教育費は残したいが、4人子供がいて余裕がない。授業料の値下げは塾選びの大きなポイントになった」と話す。

 ◇受験やめる傾向

 文部科学省が隔年で実施している「子どもの学習費調査」の08年度結果によると、各家庭が塾や家庭教師、参考書などにかけた年間の「補助学習費」は▽公立幼稚園2万8243円(06年度比23%減)▽公立小学校8万8601円(同13%減)▽公立高校12万6162円(同8%減)−−で、公立中学校の24万1288円(同2%増)を除いて減少、特に幼稚園と高校では94年度の調査開始以来、過去最低となった。

 教育関連のシンクタンク「ベネッセ教育研究開発センター」の鈴木尚子研究員は「景気の影響はないと言われてきた教育費は、もう聖域ではない。中学受験をやめたり、塾通いを減らす傾向も強まっている」と話す。

 ◇不合格なら翌年度無料/相場の半額程度

 ◇「お得感」で囲い込み

 生徒確保のため、「お得感」をアピールする動きもある。大学受験がメーンの城南予備校川崎市)は、今春から「現役合格保証システム」を導入した。週5回以上受講(年間費用約62万円)しても志望校に合格できなかった場合、翌年度の授業料を無料にする制度だ。同予備校は「必ず合格させられる自信があるからできる制度」とアピール。今春の新規生徒数は前年を上回り、既に通っている生徒が「合格保証」を受けるため受講回数を増やす動きも出てきたという。

 景気の冷え込みが厳しい地方では、格安塾が拡大している。

 鴎州(おうしゅう)コーポレーション(広島市)は08年から、中学生5科目週2回で月額6930〜1万290円と、相場の半額程度のコースを展開している。賃貸物件の活用や新卒講師の活用などでぎりぎりまで経費を削減して、低価格を実現した。「地方の保護者の年収が下がっており、負担軽減は必須」(峯岳徳常務)といい、今春には福岡市内に一気に12教室を開設、約2000人の生徒を集めた。迎え撃つ地元大手の全教研(福岡市)も「対抗せざるを得ない」と、中学生の春期講習を無料にしたほか、早めに生徒を囲い込むため小学生向けに2科目週1日で8000円のコースを設けて対抗している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100530-00000002-maip-bus_all
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