米グーグル:日本ヤフーと検索事業提携 日本市場席巻 コスト低減、技術も向上 囲い込みが促進

毎日新聞 2010年7月28日 東京朝刊
日本のヤフーが米グーグルと検索事業で提携することは、グーグルにとっては日本市場でシェアの高いヤフーを自陣営に近づける狙いがあると見られるが、同時に米マイクロソフトを含めた世界のインターネット業界の提携関係に「ねじれ」関係を生じさせることにもなる。検索分野の提携は技術的との見方もあるが、そのシェアは9割超と圧倒的で、利用者にとってもメリットとデメリットがありそうだ。

 日本国内では、シェア約58%の日本ヤフーに後れを取っているグーグル。今回の提携で、グーグルは、日本ヤフーに検索エンジンや広告配信システムを提供、利用料金を獲得することで、コスト低減を図るとともに、検索エンジンでヤフーを囲い込み、日本市場を圧倒する狙いがありそうだ。また、日本ヤフーの検索利用者を取り込むことで、サンプルを増やし、検索技術の向上にもつなげられる。ただ、海外では検索市場はグーグルの独壇場だ。

 米ヤフーは09年7月、グーグルを追い上げようと、ソフトウエア世界最大手のマイクロソフト(MS)との業務提携を発表。自前の検索エンジンの開発を縮小し、MSの開発した検索エンジン「ビング」の提供を受ける予定だ。

 最近では簡易型ブログ「ツイッター」のような即時性の高い情報が登場。検索対象が急速に増え、検索技術の開発負担が重くなっている。このため、「開発コストのかかる検索エンジンの技術は、さらに集約化が進むのではないか」(調査会社コムスコア・ジャパンの西谷大蔵代表取締役)との見方が増えている。

 一方、日本ヤフーがグーグルの検索エンジンを採用する提携は、米ヤフーの検索エンジンがMSのビングに切り替わる予定であるだけに、「ねじれ現象」をもたらすことになる。「グーグルにとっては日本で実質シェアを広げる意味があるが、米ヤフー・MS連合には日本市場を奪われる結果につながり影響は大きいのではないか」(MM総研の横田英明アナリスト)との見方が出ている。【弘田恭子】
 ◇情報更新、高速化 「多様性消える」懸念も

 日本のヤフーとグーグルの提携で、インターネット利用者にはサービス向上などメリットが生じる一方で、デメリットを指摘する声も出ている。

 グーグルの検索エンジン導入後、ヤフーのサイトから検索サービスを利用しても、「検索エンジンが変わったことに気付く人は、ほとんどいない」(ヤフー広報室)とみられる。ヤフーの画面上に大きな変更はないためだ。日本のヤフーは、これまでもNTT系のgoo、グーグル、米ヤフーの検索技術を利用してきた。米ヤフーが検索で提携した米マイクロソフトについては「日本語サービスの準備ができていない」(日本のヤフー)ことから、グーグルの選択につながった。

 一方、グーグルの利用者は、ヤフーが提供する新しい情報の入手が可能となる。ヤフーがグーグルにオークション情報などを提供するようになるため。これまではグーグルから検索する場合、オークション価格の情報が遅れる場合もあったが、リアルタイムで検索結果を得られることになりそうだ。会見した井上雅博社長は「より新しい検索が可能になる」と強調した。ネット上の掲示板やブログなどの情報も、より速く更新が反映される見通しだ。IT業界のリサーチなどを行っているアスキー総研・遠藤諭所長は「利用者はネットにリアルタイムの情報を求めており、意味のある提携だ」と話す。

 ただ、検索エンジンで9割もの寡占が進むことを懸念する声も出ている。同じ言葉を打ち込んでも、異なる結果が出てくることで、多様性が保証されてきた側面もある。提携による寡占で「ネット利用者が同じ傾向の情報に接することにならないか」との指摘が出ている。【窪田淳、永井大介
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100728ddm008020067000c.html
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