学習塾は今 低学年から「囲い込み」

6月6日、全国一斉に実施された「全国統一小学生テスト」。主催した中学進学塾「四谷大塚」のお茶の水校舎(東京都千代田区)に、朝早くから小学生が続々と詰めかけた。

 中には保護者に手を引かれた低学年の児童もいる。

 「さあ、競争だ。」という宣伝コピーで2007年11月に始まった受験料無料のこのテストは、学力上位者の発掘と受講生集めが目的だ。首都圏の直営校19校と提携塾約500校のほか、全国の500余りの塾が会場提供などで協力している。6回目の今回は全47都道府県の約2000会場で、小学2〜5年生の計約9万1000人が受験した。

 四谷大塚を運営する「ナガセ」(東京都武蔵野市)の市村秀二・上級執行役員広報部長(48)は、「横並びの公教育では、有能な人材は発掘できない。競争に勝ち抜き、社会に貢献できる未来のリーダーを育てるのが、塾の役目。全国統一テストは、それを広くアピールする挑戦でもある」と力を込める。

 テストの成績上位者には、夏休みアメリカ名門大学訪問ツアーやiPadなど様々なごほうびを用意し、将来の夢を見つける手助けをする。一方、一定以上の成績を上げた者は入塾テストを免除し、直営校に通えない場合には映像配信授業を提携塾で受けてもらうなど、様々な方法で囲い込みを図る。


 小学校低学年に力を入れる中学進学塾が、10年ほど前から大手を中心に目立っている。受験に備え、学習習慣や学びへの興味を早くから身につけさせるのが狙いだが、懸念も少なくない。

 「公立不安から子どもの将来を考えると中学受験かと思うが、親が誘導していいのか迷ってしまう」(神奈川県の小2男子の40歳父親)、「競争から刺激を受け、能力を伸ばしてほしい。でも、娘が受験に向いているのかどうか……」(東京都の小3女子の37歳母親)。テスト会場で、塾生以外の父母を対象に開かれた説明会では、戸惑いを漏らす保護者もいた。

 塾・予備校産業に詳しい「大学通信」の安田賢治・情報調査・編集部ゼネラルマネージャー(54)は、「小学校低学年からの囲い込みは、少子化や業界の再編を背景にした塾の経営戦略。早期序列化によって、本人の意思に反した進路や無意味な挫折を招く危険性もある」と指摘する。(奥田祥子、写真も)

 メモ 予備校の東進ハイスクールを運営するナガセが2006年、四谷大塚を買収。通信教育のベネッセホールディングスも07年までに、予備校のお茶の水ゼミナールと、東京個別指導学院を買収した。昨年から今年にかけては、サピックス小学部と同中学部・高校部の運営会社が、代々木ゼミナールのグループ傘下に入るなど、業界のM&A(企業の合併・買収)が本格化している。
(2010年9月4日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100904-OYT8T00230.htm
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