日本のマンガ、ベトナム席巻 著作権料など柔軟対応、韓中仏が猛追

フジサンケイ ビジネスアイ 12月21日(火)8時16分配信
 日本のマンガは、いまや世界中で人気だ。ベトナムも例に漏れず、日本のマンガが多くの若者に親しまれている。ベトナムで日本のマンガブームの火付け役となったのは『ドラえもん』だ。10年以上前から翻訳版が出回り、いまもなお人気が高い。

 ただし、その頃のマンガはほとんどが正規に著作権を取得していない海賊版だ。この流れが変わったのは、世界貿易機関WTO)への加盟を視野に入れたベトナム政府が、2004年10月に文学的および美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に加盟してからである。

 その後は政府の指導もあり、大手の出版社は日本の出版社と著作権契約を正式に結んで出版するようになった。著作権に対する意識も変化し、現在ではかなり改善されてきた。

 ◆綴じ方に文化の違い

 ホーチミン市で日本のマンガを出版する大手出版社の担当者によると、ベトナムで出版されている日本のマンガは現在100作品以上で、読者の多くは13〜20歳程度の女性という。最近、人気が高いのは『ドラえもん』や『名探偵コナン』で、日本で爆発的に売れている『ONE PIECE』も人気がある。日本のマンガはベトナムで読者を増やし続けており、市場の拡大に期待がかかる。だが、この担当者は「ベトナムでの日本マンガの発展には、3つの課題がある」と指摘する。

 1つ目は、著作権料が高いことだ。このため、正規で出版する出版社は3000部程度しか契約できず、“正規本”を違法にコピーして出版する業者への対応に苦慮している。

 2つ目は、本の綴(と)じ方に関する問題だ。一般的にベトナムの雑誌はすべて左綴じだが、日本のマンガは右綴じになっている。かつての海賊版は、ベトナム語に翻訳した後に左綴じにして売られてきたが、著作権契約を結んでから正規本を出版する際には、日本の出版社の要求により、右綴じになった。これが、ベトナム政府の出版管理局からベトナムの文化・伝統を否定するうえに、子供の教育上も混乱をきたすので、やめるようにとの指導が入ったそうだ。社会主義国ベトナムでは、出版物に対する規制が非常に厳しい。“本の綴じ方問題”は、日本の出版社と政府との板挟みとなるベトナムの出版社にとって頭痛の種になっている。

 3つ目は、暴力描写や性描写に関する文化の違いだ。ベトナムでは、子供向けマンガでのキスシーンや入浴シーンは認められない。このため、ドラえもんのしずかちゃんがお風呂に入るシーンでは黒い服を着せられていたことも実際にあったようだ。日本では、問題にならないような場面でも、その国の文化・伝統に従えば修正を余儀なくされることは少なからずあるだろう。しかし、このような修正も日本の出版社側はなかなか認めないようで、これまたベトナムの出版社は政府と日本の出版社との板挟みで苦労を強いられている。

 ベトナムで日本のマンガの人気が高い理由は、ストーリー性があることや、画力が非常に高いこと、登場人物の心理描写にすぐれていることなどがあげられる。最近は、韓国や中国のマンガもベトナムに進出してきているが、やはり全体的なレベルは日本マンガの方が上で、人気も他国の作品を大きく引き離している。かといって、人気にあぐらをかいてはいられない。

 韓国と中国は、自国のマンガをベトナムに売り込むことにたいへん熱心で、「著作権料」「本の綴じ方」「表現の修正」の3つの課題に関して非常に柔軟な姿勢で対応しているという。また、ベトナム旧宗主国であるフランスも自国のマンガをベトナムで普及させるために無料や非常に安い価格でコンテンツを提供してきている。

 ◆日本は官民で販促を

 それらの国々の狙いは、単なるコンテンツビジネスではなく、自国の文化や商品を浸透させる手段としてマンガを広めることにある。現状では、日本マンガは世界でもトップレベルで、単独のコンテンツとして他国の追随を許さない。だが、今後は他国も日本マンガを手本にレベルアップを続けていくことが予想され、いずれは家電やデジタル製品と同様に後発国が市場をもぎ取ることもあり得る。

 日本は、マンガを含む“日本ブランド”を官民一体となって世界市場に売り込んでいく姿勢が求められている。(ベトナム進出コンサルティング会社ライビエン 桜場伸介)
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