北海道コンビニ首位守るセイコーマートの独自性

東洋経済オンライン 9月8日(木)10時33分配信

 国内市場の飽和感が強まるコンビニ業界にあって、北海道地盤のコンビニチェーン、セイコーマートが成長を続けている。

 総店舗数1100店(6月末現在)で業界7位。本州での店舗は茨城、埼玉の計100店で知名度が低いが、道内では堂々の店舗数首位をキープ。ほかの都府県を見回しても、大手4社以外でトップを維持しているローカルチェーンはない。準大手以下では唯一、増収増益を続けてもいる。その強さの秘密は、どこにあるのだろうか。

 フェニックスをあしらったオレンジのロゴマークが目印の店舗に入ると、自社開発のプライベートブランド(PB)の充実度が目を引く。地元産の野菜は生鮮から漬物まで。牛乳やアイスクリーム、ミネラルウォーターにカップ麺、店内焼き上げパン……。100円前後と安いのも魅力だが、ほとんどがグループ企業の製造で、道内小売りに占めるシェアも1〜2位のカテゴリーが多い。

 店内調理コーナー「ホットシェフ」では弁当・総菜も出来立てを販売。今では全国大手も参入しているが、1995年に「ホットフード」名で本格展開を開始していたセイコーマートが一歩先を行く。

 商品調達は国内に限らない。特にワインの充実度はコンビニ随一。世界中のワイナリーから集めたワインが、400円台から並んでいる。

 セイコーマートは日本のコンビニの先駆けである。日本酒ブランド「北の誉」を持つ(現在は合同酒精に売却)酒卸、丸ヨ西尾商店(現セイコーフレッシュフーズ)が、取引先の酒店を改装し1号店としてオープンしたのが1971年8月。

 北海道の人々は、親しみを込めて「ちょっとセイコマまで行ってくる」と言う。スーパーや大手コンビニより、はるかに身近な存在となっている。

■「東京無視」で独自成長 震災後は関東で高評価

 「丸ヨ西尾は、明治、大正時代に北海道でいちばん成長したグループで、ホテルなどあらゆる事業を展開していた」(赤尾昭彦会長)。しかし、戦後の衰退で縮小。59年に入社した赤尾氏は、グループの酒造事業も経験。卸の先行きに危機感を感じ、コンビニ進出を決断した。

 「立ち上げの頃は『北の誉であれば』という信用に助けられた」という赤尾会長は、「東京から情報を取らなかったことが、生き延びた理由」と話す。大手メーカー本位の日本の食品流通にのみ込まれないよう、元祖アメリカで全米コンビニエンスストア協会(NACS)に加盟。セブン-イレブンのライセンス元だった米サウスランド社(現セブン&アイ・ホールディングス子会社)にも人脈ができた。

 さらに「米国の流通業は英仏など欧州資本が多い」(赤尾会長)とわかり、今度はオランダ本拠で卸主宰の世界的食品小売りボランタリーチェーン、SPAR(スパー)にも加盟。日本企業でありながら、欧米市場で共同仕入れをする現地企業の一つとして調達ルートを開拓。

 「世界のスーパーでいちばん売れ筋のワインは500〜600円相当」(赤尾会長)と、現地情報に裏打ちされた姿勢が、日本の食品・酒類流通の“常識"にとらわれない独自性を育んだ。

 かつて滋賀、岡山で苦労したセイコーマートファミリーマートに譲渡した関係もあり、2006年にセイコーフレッシュフーズが合弁で北海道ファミリーマートを設立。店舗数は47店まで増えた。これを受けて「大手の軍門に下るのでは、と地元紙にまで言われる」と赤尾会長は憤慨する。

 全道へ生鮮品を配達できる物流網を持つのはセイコーマートのみ。合弁は、北海道進出の遅れたファミマへの“恩返し"と同時に、セブン、ローソンにパイを食われるなら、逆に大手ブランド需要を取り込もうとする貪欲さの表れだ。

 日本では過疎の停滞地域と見られがちな北海道も、グローバルスタンダード目線では「スイスの2倍の国土と、フィンランド並みの約19兆円の道内総生産を持つぜいたくな市場」(丸谷智保社長)に映る。

 「ウチは稚内に店は出せない」と大手コンビニが語るように、広大な道内を制覇した物流は他社の追随を許さない。さらに「人口1800人の町で、セイコーマートへの来店客が1日600人いる地域もある」(丸谷社長)。会員カードによる囲い込みなど、さらに深掘りを進める戦略だ。

 「将来の食糧事情を考えると、全国の食品の50%以上を生産する北海道経済はこれからよくなる」(赤尾会長)との読みもある。農業法人は175棟のハウスを保有し、さらなる高齢化や資源価格高騰に備える。

 苦戦した本州も反撃の芽が出てきた。地元卸の廃業等で直営化した茨城、埼玉の店舗が一気に黒字転換したのだ。

 きっかけは東日本大震災。ヨーグルト、牛乳、納豆など本州で枯渇した商品を北海道から調達し、品切れを起こさなかった。近隣客から「安い」「北海道産品に強く物資が豊富」との評価を受けるようになった。

 客足は衰えず、関東の既存店売上高は前年同期比1割増が続く。今後は関東でも出店を検討する。

 大手寡占が進むコンビニ業界。しかし、北の大地で鍛え抜かれた小さな巨人の経営戦略は、準大手以下が生き残る一つの道を示している。

(本誌:山川清弘=週刊東洋経済2011年8月13・20日合併特大号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110908-00000000-toyo-bus_all

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