東日本大震災 魚、取れず売れず…飲食店の客激減

毎日新聞 3月29日(火)21時0分配信
東日本大震災の影響が水産物市場にも広がっている。東北地方から北関東までの幅広い地域で漁港や漁船が壊滅的な被害を受けたことに加え、震災後の自粛ムードや計画停電の影響で飲食店などの客足が鈍っていることもあり、卸売市場での取引量は低調。東京電力福島第1原子力発電所の事故による風評被害も懸念されている。

 ◇計画停電で家庭も鮮魚敬遠

 東京・築地市場の関係者は「飲食店も水産業者も悲鳴を上げている」と話す。震災後、宴会などのキャンセルで飲食店やホテルなどから卸業者への注文が激減し、3月4週(18〜24日)の1日平均取引量は前年同期比23%減。特にサバやイワシなどの近海魚は60〜70%も減った。高級魚のマグロは需要減を見込んで入荷量が半減、価格も18%下がった。サンマも入荷量が半減し、価格が8%下がった。午前5時半に始まるマグロの競りも参加業者数は普段より少なく、熱気は今ひとつだ。

 被害が大きい三陸地方ではこの時期、カツオやサケの水揚げが多く、養殖のカキ、ワカメなども一大産地。ワカメは岩手、宮城両県で全国の約8割、カキは約3割を占める。震災後は三陸からの入荷が絶え、業者は「カキは三重、カツオは宮崎などから」(大手水産卸)と産地切り替えでカバーしている。ある卸業者は「三陸は世界3大漁場の一つだが復旧は長期化が見込まれる。三陸のアワビやサンマが入ってこなければにぎわいが薄れる」と嘆く。

 外食や小売業界では計画停電や自粛ムードの影響が大きい。東京・虎ノ門のすし店、「福盧(ふくろ)寿司」の木口通社長(59)は「歓送迎会シーズンなのに地震直後からキャンセルが相次ぎ週末夜の売り上げは普段の1割程度」とため息をつく。停電中は冷蔵庫が止まるため、鮮魚を敬遠する家庭も多く、首都圏のスーパー「いなげや」(東京都立川市)では震災後、鮮魚の売り上げが低迷する半面、日持ちする干物の売り上げは前年同期比30%増えたという。

 水産物から暫定基準値を超える放射性物質が検出された例はないが、風評被害も懸念材料だ。海外で原発事故が大々的に報道され、築地のすし店「海鮮問屋つきじかんの」では「中国人観光客がほぼゼロになり、売り上げは3割減」(飯島浩之取締役)。「子供を持つ家庭などは放射能を気にするかも」(卸業者)と、魚離れを案じる声も出始めた。【谷多由、小倉祥徳、太田圭介】

 ◇漁港・漁船壊滅…復旧遠く

 水産庁によると、把握できている被害は漁船六千数百隻、漁港百数十港で多くは全壊とみられる。壊滅的被害を受けた岩手・宮城両県の実態は不明で、今後も大幅に増える見通しだ。三陸地方のワカメやカキなどの養殖施設も「詳細は調査中」だが、ほぼ壊滅状態とみられている。

 被災地はサンマ、カツオ、マグロなど多くの漁獲で上位を占める。遠洋マグロ基地の気仙沼港(宮城県)をはじめ大型船が使う拠点港も多く、影響は地元にとどまらない。

 被災した漁港などは公共事業で優先的に修復される。通常は長くて2〜3年で復旧するが「今回は被害が大き過ぎ、どれだけ時間がかかるか予測不可能。復旧後に漁業を続ける人がどれだけいるかも調べる必要がある」(水産庁)という。

 魚介類は09年度で自給率62%を保ち、09年に1728億円を輸出した重要産品だが、国内生産の急減や原発事故による海外での風評被害で打撃は必至。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の長屋信博常務理事は「全国の力を結集して供給維持に努めるが、我々や自治体だけでは限界がある。国による全面的な支援が必要だ」と訴えている。【行友弥】

 ◇原発事故…風評被害懸念

 原発事故による水産物への影響も懸念されている。千葉県が先週行った検査では魚介類の放射性物質が暫定基準値を下回ったが、検査実施に消極的な自治体もあり、対応が分かれている。

 249隻の漁船が被災した茨城県。漁港施設の復旧が進み、福島県に隣接する北茨城市の大津漁協は29日、15隻で銚子沖でのまき網漁を再開した。銚子漁港の水産市場が「安全性が未確認」として茨城以北の魚介類を取り扱わないため、「(もともと茨城沖で操業してきた)小型船は銚子まで行けず、死活問題」と同漁協の村山譲専務理事は話す。

 茨城県によると、銚子漁港でこの日水揚げされたマイワシは1キロ当たり49〜58円の値がついた。震災前に比べてやや高く、風評被害は特に出ていないようだ。

 千葉県沖の魚は検査で安全が確認されたことが安心材料になった形だが、茨城県漁政課は「茨城沖は操業計画が固まった段階で考えたい」と検査実施に慎重。これに対し、県内の漁業団体で構成する震災対策本部は29日、検査実施を促す要望書を県に提出した。

 その漁業界も揺れている。99年の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所の臨界事故で1カ月近く操業を停止した那珂湊漁協(茨城県ひたちなか市)の大内清一組合長は「早く決着をつけた方がいい。汚染があれば漁業団体が一丸となって補償を求める」と話す。一方、村山専務理事は「JCOの補償はわずかだった。今回もどこまで補償されるか」と原発事故の長期化を心配している。【原田啓之】

 ◇水産庁「汚染の問題ない」

 水産庁は29日、福島第1原発事故に関連して、放射性物質による水産物汚染を懸念する声が広がっていることを受け、自治体や漁業・流通業界団体向けの説明会を開いた。担当者は「現時点で市場に出回る魚に問題があるとは考えていない」と述べ、冷静な対応を求めた。

 水産庁は、千葉県銚子沖で水揚げされた魚から検出された放射性物質食品衛生法の暫定基準値を大幅に下回ったことを報告。海水中の放射性セシウムは拡散して薄まるほか、魚などの体内に取り込まれても蓄積されず、すぐに排出されることなどを指摘した。また、今後も魚介類を定期的に検査し、消費者の安全確保に努める考えを示した。【太田圭介】
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