反攻するすかいらーく、米投資ファンド傘下で活路

東洋経済オンライン 12月9日(金)11時0分配信

ファンド傘下で再建中のすかいらーく
 米投資ファンドベインキャピタルは11月、野村ホールディングス傘下の投資会社などが持つ外食大手すかいらーくの全株式を総額約1600億円で取得する。ファンドがかかわる日本企業の買収としては、2008年のリーマンショック以降、最大の規模だ。

不採算店閉鎖で業績は急回復

 企業コンサルティング発祥でマーケティングなどに強みを持つベインは、米ドミノ・ピザバーガーキングなどに投資しており、「日本でも小売りや外食の案件を手掛けたかった」(杉本勇次マネージング・ディレクター)。10年10月から野村へアプローチし、1年がかりで実現した。

■成長分野に殴り込み 「他社のまね」との声も

 外食市場は1997年の30兆円をピークに10年は23兆円と右肩下がり。その中で、すかいらーくの業績は改善が進む(図)。本業の儲けを示す営業利益は10年12月期で131億円と回復。減損損失などで当期純損益は5期連続の赤字だが、どれだけキャッシュフローを生んだかを表すEBITDAは、ライバルと肩を並べる水準だ(表)。「(外食で)これほどキャッシュを生み出せる企業は少なく魅力的だ」(杉本氏)。

 改善の理由は、野村支援の下で不採算店の閉鎖が進んだことにある。

 00年代前半、すかいらーくは市場が縮小する中、大量出店によって売り上げを拡大。その分、不採算店が増え、収益体質が悪化。店の数は4400近くに膨らみ自社内での競合も多発。業績は悪化の一途をたどった。

 06年には、経営の一線を退いていた創業家横川竟氏がトップへ就任。「既存の仕組みを壊して新しいすかいらーくを作る。5万人いる株主に迷惑はかけられない」との理由から、野村と組んでMBO(経営者が参加する買収)に踏み切った。

 が、歯止めはかからず、業績は下降線をたどる。業を煮やした野村は08年に横川氏を解任し、非創業家で子会社社長だった谷真・現社長を抜擢。谷社長は不採算店の閉鎖を加速し、店の数は約3600まで減った。今は赤字店がゼロという。

 そうした中での株主交代。すかいらーくに対してベインが求めるのは、言うまでもなく再成長である。

 続投する谷社長は「来年は75の出店を考えている」と出店の再開を明言。中心は駅前立地で小型の「ガスト」(駅前ガスト)と「ステーキガスト」の二つだ。

 駅前ガストは、駅ビルの地下や2階などに出す。ロードサイドにある従来の「ガスト」と比べて、店舗面積は狭くなるが集客力があって客の回転がよく、投資額も安く済む。

 もう一つのステーキガストは、名前のとおりステーキメニューを強化した。加えて、売りにするのがサラダバー。1000円超のステーキを注文すれば、サラダやカレーの食べ放題がセットで付く。実は、サラダバーのセットは競合のエムグラントフードサービスが「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」で始めて人気になった。同社の売り上げは、設立された06年の3億円から11年は225億円に拡大する見込みで、すかいらーく二匹目のどじょうを狙う。

 ほかにも、ハンバーグ牛丼などが目玉の「どんぶりガスト」を始めたほか、既存の店ですでに展開している宅配事業を拡大し、ワタミなどが先行する高齢者向け給食宅配にも参入する計画を立てる。

■東北の店舗で食中毒 数字に追われる弊害か

 業界関係者は「他社のまねばかり」と冷ややかだが、規模を生かして業界内の成長分野に参入するのが、すかいらーくの戦略だ。

 それはファミリーレストランである従来の「ガスト」も同じ。競合の「サイゼリヤ」を意識し、高品質・低価格路線を打ち出している。期間限定ながら、10月は800円以上するハンバーグのセットを390円で販売。11月は500円程度のキッズプレートを39円に値下げした。

 コスト競争力の強化にも動く。グループの食材を一括で購入。全国に10カ所ある自社工場で一つの食材をガストや中華の「バーミヤン」などそれぞれのメニューに合わせ余さず加工すれば、原価を低く抑えられる、とそろばんをはじく。

 成長の青写真を描く中で「ベインがやってきたのは渡りに船。彼らのマーケティングや調査能力は非常に高い」(谷社長)。すかいらーくはここ数年、店の整理に追われ、マーケティングに力を割けなかった。ベインも「これから商圏や店舗運営をしっかり分析して改善を積み上げていく」(杉本氏)と意欲的だ。

 ただ経営の急な変化で、現場に大きな負担がかかっているのは否めない。8月、東北4県のガストで14人が食中毒になり、120店の営業自粛を余儀なくされた。仙台工場で加工した浅漬けが原因とみられ、谷社長は「震災で失った利益を取り戻そうとしてメニュー改訂を進め、工場に負荷がかかった。起こるべくして起こった可能性が高い」と反省する。

 構造改革にメドはついたが、経営が盤石とは言いがたい。あらゆる分野に手を広げ、経営資源が分散し管理もおろそかになれば、過去の二の舞いになりかねない。再生の真価が問われるのはこれからだ。

(松浦 大 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2011年11月26日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111209-00000000-toyo-bus_all

【飲食店を繁盛させる グルメール】携帯販促・携帯メール配信・携帯HP・アンケート

http://grmail.info/

http://www.facebook.com/grmail

http://twitter.com/grmail1101