焦点:中国の豚肉価格、飼料高騰で来年に供給不足で急騰の恐れ

2012年8月28日

 [シンガポール 28日 ロイター] 豚は一般的にはインフレ圧力の指標ではないが、中国では家畜飼料の価格高騰から養豚数が減少しており、来年初めには供給不足から豚肉価格が急騰して消費者物価を押し上げる恐れがある。

 中国の養豚業者は国内需要の減退と飼料価格の記録的高騰に直面し、肥育豚の出荷を余儀なくされている。米国が約半世紀ぶりの深刻な干ばつに見舞われてトウモロコシや大豆の価格が値上がりし、飼料価格は急騰している。

 中国では豚肉は基本的な食材で、その価格は食品価格の動きを左右する。豚肉の供給は足元では潤沢だが、肥育豚の出荷増によって半年ほどで在庫が減少し、価格が上昇に転じる見込みだ。

 食品価格の上昇はインフレを押し上げるだろう。昨年からの政府の物価鎮静策でインフレは今は落ち着いているが、物価高は社会不安の引き金になるため、中国経済にとって引き続き最大の懸念材料だ。

 ラボバンク(香港)の飼料業シニアアナリスト、Jean-Yves Chow氏は「中国のトウモロコシと大豆の値段から考えて、飼料のコストは既に過去最高水準に達した。収益性が圧迫され続けると、来年初めには豚肉は供給量が減少して価格が上がり、それが食品インフレを煽るだろう」と話した。

 政府の経済計画当局は今月、養豚業の現状への懸念から、消費がピークを迎える来年2月の春節旧正月)に豚肉供給が不足する事態に備え、冷凍豚肉の在庫積み増しを命じた。

 豚肉の備蓄は冷凍肉と肥育豚の両方の形で行われ、価格の安定を支える。これまでには食品インフレの抑制や国内養豚業の安定の手段としても使われた。

 中国の養豚業の生産量は年間5000万トンで、全世界のほぼ半分を占める。2007年には豚繁殖・呼吸障害症候群(青耳病)の発生で価格が急騰し国家的な問題になった。

 当時の豚肉価格の高騰は食品物価を急激に押し上げ、特に貧しい農村部が深刻な影響を受けた。

 ただ今までのところ、米国の干ばつをきっかけにした世界的な食品価格上昇が中国の消費者物価に与えている影響は限定的で、7月の消費者物価指数(CPI)は2年半ぶりの低い伸びとなった。CPIの約30%を占める食品の価格は、豚肉価格の低下を背景に7月に前年同月比2.4%の上昇となり、6月の3.8%から上昇率が鈍化した。

 アナリストの間では、豚肉需要の減少と中国経済の伸び悩みで、食品価格への影響は限られるとの見方もある。

 北京オリエント・アグリビジネスコンサルタントのアナリスト、Wang Xiaoyue氏は「経済の全体状況は良くない。外食する人が減り、閉鎖した工場も多い。このため豚肉需要は減っている」と説明した。

 <飼料価格が高騰>

 中国の養豚業者は、国内の食肉価格が過去最高に上昇したことを受けて、今年初めから肥育豚の飼育頭数を増やしてきた。ところが年半ばには飼料価格が暴騰。米国の穀倉地帯が56年ぶりの大干ばつに見舞われ、シカゴ市場でトウモロコシと大豆の相場が過去最高値を付けた。

 中国は世界で取引される大豆の60%を購入し、トウモロコシの輸入では世界6番目。養豚業の約30%が小規模農家で、そうした農家が飼料価格高騰でまず最初に打撃を受けた。

 ラボバンクのChow氏は「中国各地の小規模養豚業者は利幅が落ち込んで豚を処分している。このことが来年初めの供給と価格にとってリスク要因になっている」と指摘した。

 (Naveen Thukral記者)

http://www.asahi.com/international/reuters/RTR201208280113.html

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