焦点:中国「倹約令」が景気下押し、汚職撲滅のジレンマ鮮明に

2013年 05月 8日 15:07 JST

[北京 8日 ロイター] 中国の習近平国家主席が力を入れる「倹約令」。公務員に質素な職務姿勢を求める倹約励行の結果、最高級レストランでは閑古鳥が鳴き、高額飲食品の売り上げも落ち込むなど、世界第2位の経済大国に景気下押し圧力がかかっている。

倹約令による打撃をもろに受けているのは、北京など大都市部の外食産業。豪華な接待や宴会の数が減ったことで、ナマコやアワビなどの高級食材の売り上げも急減しているという。

先月後半には、外食チェーンの美林閣が、中央政府の官庁街である北京西部に構えていた主力レストランを閉店した。美林閣のマネジャーは「大損で閉店せざるを得なかった。レストランは政府支出に依存してきたので、存続が難しかった」と述べた。

このレストランは4000平方メートルの広さに宴会場38室を備える大型店で、閉店により従業員約130人が職を失った。

中国の民間経営外食グループとして初めて株式上場を果たした湘鄂情(002306.SZ: 株価, 企業情報, レポート)の2013年第1四半期決算は、純損益が6840万元(約10億9000万円)の赤字に転落。前年同期は4620万元の黒字だった。

同国外食産業の売上高の伸び率は、2012年は前年比13.6%だったが、2013年1─3月は同8.5%に急減速。大型店の売上高は1─3月は前年比2.6%減と、前年同期の同12.9%増から特に急ブレーキがかかった。

<長期的にはプラス効果も>

一方で、倹約令は長期的に見れば、個人消費を押し上げることになるとの楽観論もある。個人消費が拡大すれば、中国はより持続可能な経済基盤を持つことにつながる。

倹約令によって国内総生産(GDP)の推計15%を占めるまで膨れ上がった政府支出が削減できれば、その分を社会福祉制度の財源に回すこともできる。そうなれば、市民の所得は医療費支払いなどに備えた貯金ではなく、消費に向かうことになるだろう。

中国GDPに占める家計消費支出の割合は約35%だが、この比率は米国の半分以下で、主要経済国の中では最も低水準。JPモルガン・チェース(香港)のチーフ中国エコノミスト、Haibin Zhu氏は「(倹約令は)短期的には、特に政府支出の面で経済にはマイナスだが、長期的にはプラスになり得る」と述べた。

汚職撲滅には抜本改革必要>

多くの高級レストランは現在、割安なメニューも提供している。

湘鄂情の孟凱会長は今年2月、業態を高級外食から大衆外食にシフトさせると発表。同社の株価は1月半ば以降で約30%下落した。

外食産業の低迷は、役人の宴会で主役となる高級食材や高級酒、たばこの売り上げにも波及している。北京・豊台区の海産物卸売業者によると、かつて高額食材の代表格だったナマコの価格は急落。業者の1人は「国の指導者が政府役人はこの手の食材はもう食べてはいけないと言うからだ」と肩を落とした。

国家主席は、汚職共産党の存続を脅かすほど深刻な問題になっているとし、贈収賄撲滅を政権の最優先課題の1つとしている。

中国政治の専門家、香港中文大学のウィリー・ラム氏は「これは派手な消費への対策であり、当面は継続されるだろう」と語る。

ただ同時に習国家主席は、汚職がはびこる根源的理由となっている経済活動における政府の役割を縮小させるため、さらに抜本的な対策を取らなくてはいけないかもしれない。

政府系シンクタンクの中国国際経済交流センター(CCIEE)のシニアエコノミスト、Xu Hongcai氏は「倹約令は良いスタートだが、改革は必要だ。経済への下押し圧力を我々が心配する必要はない」と語っている。

(原文執筆:Kevin Yao and Megha Rajagopalan、翻訳:宮井伸明、編集:梅川崇)

http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE94703920130508?sp=true



【飲食店を繁盛させる グルメール】携帯販促・スマホ販促・携帯メール配信・販促支援
http://g.grmail.info/