“地盤沈下”からの脱却なるか 大転換迫られる関西経済

産経新聞 1月2日(日)12時38分配信
地盤沈下”が叫ばれて久しい関西経済に注目が集まっている。新生パナソニックグループの誕生や百貨店の開業・増床合戦など業界再編を促しかねない大型の経済トピックが目を引く。一方で、大手企業の海外進出で関西経済を支える中小製造業の苦境は続く。大転換を迫られた関西経済はどう動くのか、5つのテーマで今年を展望する。

■新生パナソニック本格始動 韓国勢と全面対決へ

 パナソニックが4月に三洋電機パナソニック電工を完全子会社化し、いよいよ新生パナソニックグループが本格始動する。これに伴い、三洋とパナ電工は上場廃止になり、事業再編も加速する。経営規模を拡大し、薄型テレビなどで先行する韓国メーカーなどとのグローバル競争に備えた施策も相次ぎそうだ。

 「事業再編を推進し、平成24年度に営業利益で600億円の相乗効果を目指す」。パナソニックの大坪文雄社長は完全子会社化によるスケールメリットを徹底的に追求する構えだ。

 事業の重複を取り除くため24年1月に発足する新体制では、家電などの「コンシューマ」、太陽電池などの「デバイス」、省エネシステムなどの「ソリューション」の3分野を軸に事業部門を集約する計画で、今年は地ならしの年になる。

 SANYOブランドでの商品開発や生産も23年度の1年間で徐々に縮小し、原則としてPanasonicブランドに統一される。

 3社の歴史は、いずれも松下幸之助氏が大阪の地で創業した松下電気器具製作所にさかのぼる。グローバル競争を勝ち抜くため、再び一つの企業として融合できるかが課題となる。

関空伊丹空港統合へ 実現を疑問視する声も

 関西国際空港会社の1兆3千億円の債務削減に端を発した関空と大阪(伊丹)空港との経営統合問題が大きく動き出す。国土交通省が1月に招集予定の通常国会に、統合関連法案を提出するからだ。

 国交省は24年4月に関空会社を、両空港を一体運営する会社と、関空の土地を保有する会社に上下分離し、最終的には民間に両空港の運営権売却で債務を一掃するというシナリオを描く。ただ、シナリオ通りに運ぶかは未知数。国交省は運営権売却に関する数字を交えた具体的な公式説明をしておらず、地元からは実現を疑問視する声が強まっているためだ。

 新会社2社のトップに民間人を起用するのかも焦点となる。関空会社は2代続けて民間人を経営トップに据え、不採算事業の見直しなどで成果を上げた。また、運営権売却後は補給金の減額や廃止が見込まれ、補給金の今後の扱いも注目される。

 海外の空港は、免税店など非航空系収入が収益のひとつの柱となっている。伊丹旅客ターミナルビルと両空港の運営会社の経営一体化も、統合の成否のカギをにぎりそうだ。

■JR大阪駅全面開業 オフィス地図塗り替えも…

 JR大阪駅の新たな駅ビルの完成が目前に迫っている。駅南側の「アクティ大阪」が増床し「サウスゲートビルディング」として今年3月に開業。5月には駅北側のオフィスや百貨店、専門店などからなる「ノースゲートビルディング」もオープンする。

 駅ビルの完成に合わせ、周辺でも昨年5月に41階建ての「梅田阪急ビルオフィスタワー」、同11月には28階建ての「大阪富国生命ビル」が開業、梅田北ヤード地区でも25年に大型ビルが完成する。相次ぐオフィスビルの開業は、テナントスペースの供給過剰を招いており、既存ビルを中心に空室率が上昇。そのため同地区の賃料は低下傾向にあるという。

 企業にとっては賃料が高くて、これまで手を出しづらかった梅田地区にオフィスを構えるチャンス。伊藤忠商事大阪本社は今年5月、本町から大阪駅北のノースゲートビルに移転。丸紅大阪支社も24年中に船場から梅田地区への移転の検討を始めた。大林組の大阪本店も北浜から中之島に25年完成予定の大型オフィスビルに移る。

 JR大阪駅の新ビル開業は、大阪のオフィス地図を塗り替える可能性を秘めている。

■幕開く大阪百貨店の「2011年問題」

 JR大阪三越伊勢丹が5月に、JR大阪駅北側のノースゲートビルディングに5万平方メートルの売り場を確保して開業、百貨店の開業・増床合戦で、オーバーストア(店舗過剰)となる「2011年問題」の幕が開く。

 三越伊勢丹の開業前に先手を打つのが、売り場を1・6倍の6万4千平方メートルに増床させて4月下旬に全面開業予定の大丸梅田店。阪急百貨店梅田本店の増床オープンは24年にずれ込むが、開業すれば、梅田地区の百貨店4店の売り場面積は従来の1・6倍を超える約25万平方メートルになる。

 難波の高島屋大阪店も1・4倍の7・8万平方メートルに拡大した売り場を今年3月に完成させ、梅田の百貨店が角突き合わすだけでなく、周辺地域の百貨店も顧客の囲い込みを図るエリア間競争になる。

 全国の百貨店の売り上げは9年から減少し続けている。デフレや消費低迷に、大型ショッピングセンター(SC)やファションビルの台頭が拍車をかけているためだ。その意味で注目されるのが、今年4月下旬に完成する天王寺阿倍野エリアに大阪府下最大級のSC「あべのキューズタウン」だ。2011年問題は百貨店に変革を迫り、その存在価値を試すことにもなる。

■厳しさが続く関西の中小製造業…復活のキーワードは

 関西経済を支える中小製造業だが、大企業の海外進出などの影響で、仕事がどんどん失われつつある。資金繰りに苦しむ企業も増える中、中小企業金融円滑化法(返済猶予法)が24年3月まで1年間延長されることになった。

 中小企業から金利減免など返済条件変更の申し出があれば、できる限り応じる義務を金融機関に課した同法が企業倒産の抑制に一定の効果を発揮したのは間違いない。ただ、不振企業の倒産先送りなどモラルハザード(倫理の欠如)の広がりを懸念する声もある。

 中小企業の業績が改善しなければ、金融機関は、返済猶予した融資を回収できず、不良債権化する可能性がある。すでに返済を猶予されたにもかかわらず、倒産する企業が出始めているという。

 昨年は関西の中小企業4社が電気自動車(EV)を独自開発するなど、全国的に関西のものづくり産業が脚光を浴びた。一方で円高で大企業が生産拠点の海外移転を進め、資金的に海外進出する余力のない関西の中小企業は価格競争面で苦戦を強いられている。

 「日本にしがみついても需要は縮小するばかり。力のある中小企業は海外へ進出した方がよい」。岩井証券イワイ・リサーチセンターの有沢正一センター長はこう話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110102-00000523-san-bus_all

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